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玄人好みのやる気スイッチ

日本の流通業界は激動の真っただ中にある。 インターネットの急速な広がりに伴って進行する高度情報革命は電子商取引(エレクトロニツクコマースHEC)の普及を促し、店舗を持たない販売業者や仲介業者の急成長につながっている。
全く新しい流通勢力の誕生である。 こうしたサイバー化の波は既存の流通業にとって脅威となるばかりか、書籍、衣料、自動車といった分野では既存の業者をも巻き込んでさらに大きな波となっており、これまでの流通の形態を大きく変化させつつある。
一方で、九九年は巨大化した大手流通業にとってまさしく変革の嵐が吹き荒れた時期でもあった。 金融システム不安、アジア危機といった経済の変調に対する懸念は以前に比べて和らいだものの、長引く消費不況下で全国の百貨店・スーパーの売上高の低迷は依然として続き、収益回復の見込みが立たない企業のリストラクチャリング(事業の再構築)は加速している。
流通業最大手で業績不振が続くDは九九年三月に策定したリストラ新三カ年計画で、初の希望退職に踏み切ることを決めた。 同社が人員削減に着手するのは初めてのことだ。
さらに五月にはハワイのアラモアナショッピングセンターを売却、九月にはR株の売却まで表明した。 また、SグループではSがNバンク子会社の債務二千百億円の免除で金融機関と合意した。
流通関連企業で債務免除された初のケースだ。 D、Sのこうした一連の動きはそれぞれの経営が相当厳しい状況に追い込まれたことを物語っている。

百貨店にとっては波乱の一年だった。 T百貨店は九九年一月、呉服店(白木屋)時代から数えて三百三十六年という長い歴史を誇った日本橋店を閉鎖した。
日本橋店閉鎖が発表された九八年九月以降、D丸和歌山店、M越新宿店南館、T屋津山店、福岡T屋(福岡市)などが相次いで閉店を決めた。 従業員の問題やイメージダウンなどからタブー視されていた店舗閉鎖だが、T百貨店日本橋店の閉店を契機にか閉店タブー視は崩れた。
しかし、何といっても象徴的だったのはD創業者のN社長が退任したことだろう。 九九年一月、N氏は社長の座を味の素元社長でD副社長のT氏に譲り、自らは会長職に専念することになった。
N氏をはじめ、T百貨店のY社長が会長に就任したほか、S百貨店のW繁明会長が退任するなど、九九年は流通業界の有力経営者が相次いで一線を退いた年でもあった(Y氏は九月に死去)。 百貨店・スーパーが低迷するのをしり目に、成長を続けたのが専門店だ。
家電やドラッグストア、カジュアル衣料などの専門店は値ごろ感を武器に業績を伸ばした。 一OO円ショップが全国的に快進撃を見せたのも、値ごろ感が大きいだろう。
小売業界でも再編・淘汰の流れが一段と加速している。 医薬品卸では業界二位のK薬品と六位のS堂、中堅卸の東京医薬品が二000年四月に合併することを決めた。
新会社は売上高でSを上回り、業界トップとなる。 日用雑貨卸では三位のC物産と十位のCHが十月に合併した。

また、食品卸ではH食が低温流通商品の強化を狙い十月、経営再建中のN系食品卸ユキワに資本参加した。 原則として九八年七月から九九年六月までのN新聞の特集、ニュースと九九年八月までの調査を再編集し、流通業界の動きをわかりやすく解説したものである。
一九九九年十月N新聞編集Nまだら模様の個人消費「実感わかない」回復景気回復のリード役と言われる個人消費。
九九年第一四半期の個人消費の伸ぴは前期比一・二%増とプラスに転じ久しぶりに明るさを取り戻した感じだが、ミクロの分野では寸実感がわかない」(スーパー首脳)という声が多い。 パソコンなどが大幅に売り上げを伸ばしたり、軽自動車も快走を続けているものの、食品、衣料品といった生活に密着した消費は依然として厳しい。
完全失業率は五%近くまでJし、過去最悪の水準。 雇用不安は消費にも影響を及ぼし回復力は弱、Nストア協会(S会長)がまとめている全国スーパー売上高は九九年八月時点で九カ月連続の前年実績割れ。
日本百貨店協会(小柴和正会長)による全国百貨店売上高は十六カ月連続のマイナス。 通産省の商業販売統計では同じく七月時点で二十八カ月連続の前年割れとなっている。
通産省では「下げ止まり基調にあるものの、増勢に転じるには時聞が掛かる」と見ており、消費の地合いの弱さを見せつけた。 消費不振の中でも特に深刻なのが食品や衣料品。
食品は不況下でも安定した需要があったが、こうした経験が通用しなくなっている。 「我慢しても買う」選別消費こうした中で、消費者行動に微妙な変化も伺える。
それは「選別消費と言われるものだ。 どうしても欲しい商品やサービスに絞り込んで購入する消費者の姿だ。

収入の減少、依然としてぬぐいきれない先行き不透明感で消費者の財布のヒモは緩くないが、それでも選んだ物はほかで節約してでも買うという「我慢の消費」だ。 その選ばれた商品、サービスは外食やレジャー、我慢の消費の対象は教育関連費や衣料品だ。
流通この一年選別消費の極め付けは、「待ってでも買いたい商品やサービス」。 東京都内の京王線初台駅前近くの商店街のはずれ。
フランス料理店「レストラン・キノシタ」は毎月一日に四カ月先の予約を受け付けるが、ほほ午前中に埋まってしまう。 どこにでもありそうな小さなレストランだが、口コミで人気が高まった。
希少性をうまく売り物にして消費者をくすぐるのがM県高鍋町にある黒木本店だ。 同社の焼酎「百年の孤独」は伝統技法を三五年かけて焼酎を作り込むが、その神秘さ故に根強いファンがいる。
不振が続く自動車業界でもH技研工業が九九年四月に発売したスポーツカー「S二000」は、納車が年末になるくらいの人気だ。 価格は三百万円台。
高出力の一方で環境に優しいという触れ込みが受けている。 このほかにも高級バッグなどを扱うエルメスジヤボンでは、「四年待たないと買えない状態のバッグもある」という。
一部投資家にバブルもう一つ。 消費に明るさを見付けるとすれば、それは株価が九九年初頭から堅調に推移しており、一部の個人投資家の中には含みが拡大してきていることだ。
一種のバブル。 富裕層はじわりと始動している。
日本リサーチ総合研究所の九九年四月の消費者心理調査では今後一年間の消費見通し(「増やす」割合から「減らす」を引いた値)を年収別に見ると、年収千万円以上の世帯は半年前に比べ一九・一%改善した。 これは全世帯平均を九・六%上回り年収別では最大の改善となった。

青井忠雄・丸井社長は「バブルが消費を支払えている」と言い切る。 こうした高額所得層に狙いを定めて旅行を売り込むのがニッコウトラベルだ。
豪華客船「クイーンエリザベス2世号」、超音速旅客機「コンコルド」、「オリエンタル急行」の高級客車を使った大西洋往復ツアー(二人で百十万円)には予約が殺到し、参加人員は当初予定の三・五倍の七十人に膨らんだ。 「消費者は物を買わなくなったのではない。
買いたい物がないだけだ」。 SI堂社長は現在の消費環境をこう見る。
そうした中で消費者が買いたいと思っているトップバッターがパソコンだ。 日本電子工業振興協会がまとめた九九年四~六月期のパソコンの国内出荷台数は二百三万台で前年同期比三八%増加、九八年七~九月期から四・四半期連続で増加となった。
インターネット関連の電子メール・ブームに乗り個人の購入者が目立つほか、企業の需要も依然として根強い。 レジャー関連でもJTBの推計で九九年七、八月の旅行者は延べ総数が八千五百六十万人で前年同期比二・五%増。

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